大阪市北区天神橋7丁目
大通りから少し入った小さな通りに
お蕎麦屋さんや美容室、銭湯など
昔ながらのお店が立ち並ぶ。
その通りで一際目立つ、赤いサンシェードが特徴的な喫茶店、『喫茶 ジャルダン』。

中に入ると常連さんで賑わった店内。
ママさんが「いらっしゃい」と笑顔で迎えてくれた。
店内には外からの光が差し込んでいてとても明るい。

お客様さんからいただいたという鬼灯の絵や
姪っ子さんの作品が飾られている壁、
シルバーの円錐型が特徴的なペンダントライト、
カウンター後ろのモザイクタイルなど
見ていてワクワクが止まらない。

今年で86歳のママさんは、優しい話し方と笑顔がとても素敵な方。
88歳のマスターが引退されてからはママさん1人で切り盛りされていたそう。

2025年9月6日で54年目を迎える予定だったジャルダンは、
建物の耐震工事の関係で2025年7月31日に閉店を余儀なくされた。
「そのことを常連さんに伝えるのが辛い」と悲しそうに言っていたママさん。
閉店ギリギリで閉まることを知る常連さんも数多くいたそう。
ジャルダンがオープンしたのは万博の翌年。
当時、珈琲に魅了されたマスターが焙煎する仕事から始め
その後「お客さんに珈琲を提供したい」という思いから居抜きで喫茶店を探し始めた。
そんな中、珈琲屋さんが店を見繕って紹介してくれたのが『喫茶 ジャルダン』。
いざ店に立つと、「カウンターの外と中では全く違う世界だ」とマスター。
休みの日はコーヒー飲みたさに、ママさんと2人で色んな喫茶店をまわっていたそう。
お店にくるお客さんには「カレーや定食を出さないのか」と言われたが、
コーヒーへのこだわりがあり、軽食はサンドイッチのみ。
ホットコーヒーもアイスコーヒーも香ばしさの効いた深煎りでとても味わい深かった。

お店を始めた頃、当時流行っていたゲーム機の営業の方に
「お店のテーブルをゲーム機にしたらお店の営業より稼げますよ」と提案されるが、
お客さんが損してうちに金を落とすのでは申し訳ないと断り
「そんなこと言う人は初めて」と営業の方も驚いていたとか。
珈琲とお客さんへの想いが素敵なマスター。
ママさんもその想いを大切にされており、
常連さん達はママさんに会いに来ているように感じた。
お客さんみんなが家族のようで
朝起きてきた息子に話しかけている、
そんな錯覚をするほどに
ホスピタリティに溢れていた。

『喫茶 ジャルダン』は喫茶店の良さを再確認することができる、あたたかい場所だった。
そんな喫茶店が無くなることは本当に悲しい。
お店としては無くなってしまったが
たくさんの方の心には残り続けるのだと思う。
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今回閉店したジャルダンさんから
調度品の一部を保存させていただきました。
姪っ子さんの絵画は
喫茶水鯨に飾らせていただいています。
今回ご縁を繋いでくださった村田商會さん
ありがとうございました。
そして調度品のレスキュー活動に参加してくださった
喫茶 古月さん
珈琲 壹番館さん
喫茶 たむさん
豆人さん
珈琲焙煎工房 全さん
ありがとうございました。