大阪でネルドリップの珈琲店といえば
ご存じの方も多い有名店
森ノ宮の「ばん珈琲店」さん。
大通りに面する店構えにも関わらず
一歩店に入ると街の騒がしさを忘れる静かな空間が広がっています

ばん珈琲店さんはもともと鴫野で30年ほど喫茶店を経営されており
その後ママさんの妹さんが営んでいた喫茶店(のちのばん珈琲店)に移り
内装をご夫婦で作り替えて再スタートされたお店だそうで
森ノ宮に移ってからは20年ほど経営されていたとのこと。
大学卒業後、すぐに奥様と喫茶店を始め、
当時大繁盛だったが、ドリンク提供の際にコーラをパッと出して終わるということに疑問を抱き始め、
もっとやりがいが欲しいという思いから一杯一杯手だてするコーヒーの道へのめり込んでいったそう。
珈琲豆も最初は焙煎されたものを卸していたが
「もっとこういう珈琲を!」と追求していくうちに卸先と揉め
「そんなに言うなら自分で煎ったらよろしいやん」と言われる始末。
「焙煎機もろたら自分で煎ったるわ」と卸先に返したところ、
本当に生豆と焙煎機を渡され、焙煎の右も左も分からないまま焼き始めることに。
直火式焙煎機で焼き始め
10年経った頃、ようやく焼き方や珈琲のことが分かり始めたとマスター。
その後、さらに洗練されていき
“喫茶店”から“コーヒーだけ”のお店に変わっていったそう。
マスターは「大学を出てすぐに喫茶店を始めて一筋でやってきたから世間のことは分からん」と
おっしゃっていたが、私たちからしたらマスターは職人そのもの。
洗練された空間も珈琲豆もネルドリップも。
簡単に真似できるものではありません。

店内の家具は家具屋さんに一式頼んで作ってもらったもので
お店の真ん中で存在感を放っていた大テーブルは折り畳み可動式のもの。
その他テーブル、椅子もそれぞれ種類が違っていたり
アンティークな雑貨は海外のものだったり。
それらはイギリスなどで奥様が買い付けてこられたものだそう。
ところどころに素敵な花器も飾られている。





玄関扉すぐ横にある焙煎機は炭火式という珍しいもの。
炭を焚くと店内が暑くなるため、午前中のうちに七輪で炭を起こし
毎朝のように焙煎されていたそう。
「夏はとにかく暑かった」とマスター。

珈琲豆は焙煎の前に手で丁寧に洗って乾燥させたもので
珈琲へのこだわりが伝わってきたことと共に
ばんさんの珈琲豆を求めて買いに来るお客さんがたくさんいたことにも納得できました。
閉店最終日を終えても豆の販売が追いつかず、閉店後に豆を焼いていたそう。
今回、お店はもうマスターの代で終わらせたいということから継承活動には至りませんでしたが
「喫茶 古月」さんと共に内装を一部受け継がせていただくことになりました。
日の目を浴びるその日まで
大切に保存させていただきます。
今現在
古月さんではばん珈琲店さんで使われていたテーブルが内装として使われています。
皆様ぜひ足を運んでみてください。
お店を辞めたら山奥でひっそりと
焙煎をしたいと語っていたマスター。
またいつかマスターの珈琲が飲める日を楽しみにしています。
